この料理は1958年に中国で出版された『中国名菜譜』の四川編に登場する古典料理です。こちらの書物は国家指導のもとに作られた大変貴重なもので、中国全土を11輯にしたレシピ集です。日本では1973年に『中国名菜譜』中山時子訳として、東西南北他の5分冊が柴田書店より出版されています。
この書物に掲載された古典料理「葱末肝片」は、近年では四川でもなかなか目にすることができません。今の四川は新派川菜(シンパチュワンンツァイ)と呼ばれる、地方料理や海外の料理が融合した新しい料理が次々生み出され、若者を中心に人気がでています。私が四川に足を運ぶようになって20年になりますが、葱末肝片を一度も見た事がありませんでした。
ところが2年前、私が所属する松雲門派(伝統料理を継承する流派)の店の調理場で働いていると、葱末肝片のオーダーが入ったのです。料理人は両手に包丁を持ち、たくさんの葱がペースト状になるまでリズカルに叩いて香りをだし、レバーを薄切りにして下味をつけ、鍋に入れ強火で一瞬にして炒め上げました。レバーからは湯気が立ち昇り、ふわりとネギの香りに包まれていました!書物でしか見たことない古典料理の調理工程を目の当たりにし、とても興奮したのを憶えています。そして自分ならどう仕上げるか、考えを巡らせていました。
シンプルな料理ほど難しく、料理人の技量が試されます。レバーの状態、下処理、火加減、スピード….全ての要素が完璧でなくてはなりません。このような古典料理に出会うと、私はますます四川料理の魅力に惹かれてしまいます。
伝統四川料理を今に伝える成都・松雲門派の正統な継承者であるシェフ井桁良樹が日本人が知らない本当の四川料理を提供します。この記事を見て飄香に興味を持った方は、以下のコンテンツでより詳しく私たちについてご覧いただけます。