熊の手?豆腐??料理名だけ聞くと想像がつきませんね。四川ではとてもポピュラーな家庭料理で、麻婆豆腐よりもよく作られていると聞いています。またの名前を家常豆腐(ジャチャンドウフ)。家庭で常備される調味料(豆板醬など)を使った味付けの豆腐料理のことで、四川の料理人曰く、豆腐を両面揚げ焼きしたものが『家常豆腐』、片面だけ揚げ焼きすると『熊掌豆腐』なのだとか。
そして料理名に因んだこんな一説があります。
唐の時代、四川地区では官僚の汚職が深刻な問題で、農地を収奪するなど民の生活は困窮していた。この事態を伝え聞いた玄宗(唐の第6代皇帝 則天武后以来の混乱を平定し太平の世を築いたが、晩年は楊貴妃に溺れて安史の乱を招いた)は、この地の者を尾行して密偵を行ったのだとか。噂通り人々の生活は貧しく、玄宗はとても心を痛めた。すぐに現地の民を率いて再建に努めたが、満足な食事ができない状態は暫く続いた。皇帝に献上する食材の調達すらままならない。その最中、ある村人が知恵を絞り、豆腐を切って熊の手(当時高級食材)に見立てた料理を作り『熊の掌』と偽って皇帝に献上した。その料理を受けとった玄宗はじっくりと味わって食べ、すぐに豆腐だと分かったが、「ふっ」と笑みを浮かべるだけで村人を咎めることはしなかった。
やがて『熊掌豆腐』は天下に名を馳せ世のご馳走となりました。現在に至るまで伝わり、四川で人気の家庭料理となったのです。玄宗が後に窮愛した楊貴妃の出身地は四川省。皇帝の玄宗が密偵を行った!?本当の話かもしれません。
伝統四川料理を今に伝える成都・松雲門派の正統な継承者であるシェフ井桁良樹が日本人が知らない本当の四川料理を提供します。この記事を見て飄香に興味を持った方は、以下のコンテンツでより詳しく私たちについてご覧いただけます。