飄香の魅力
飄香がこだわっているのは料理だけではありません。料理をより華やかに彩る器は、かつての宮廷料理のスタイルをモチーフに、国内外から集めてきたものを使用しています。また飄香でデザインを考案し、特注で制作した器も多く含まれています。店内空間は中国の伝統的なインテリアデザインを参考に、絵画や鳥かご、壺、楽器、調度品などを配置しています。成都に紛れ込んだかのような世界観で、お食事をお楽しみいただける工夫が随所に施されています。
このページでは、器とインテリアをピックアップし、ご説明させていただきます。
目次
飄香で使われている磁器やガラス食器の多くは国内外で収集したものですが、一部は飄香オリジナルの器として特注で作っています。背面や脚部などに「飄香」の文字が入っているものは、すべてオリジナルの器です。
日本でも人気が高い景徳鎮は、本来は中国江西省の東北部に位置する地名であり、ここを原産とする陶磁器を総称した名前です。陶磁器の製造が盛んになった宋代に、北宋皇帝・真宗が時の年号「景徳」をこの地に与えたのが由来とされています。良質な土と窯を燃やすための松に恵まれたこの地は、世界有数の陶磁器の産地となりました。
景徳鎮には厳密には陶器も磁器も含まれますが、特に有名なのが白磁です。元代にはコバルト顔料を使って模様を描く染付の技法が広まり、これが景徳鎮を象徴するデザインとなりました。
新たにオープンした広尾本店では、以前より使用していた器に加え、新たな器をオーダーしました。中でも特徴的なのが「青磁水仙盆」です。これは、中国北宋時代末に宮廷用の青磁を焼成した汝窯(じょよう)を代表する器です。汝窯は「天青色」とも形容される典雅な釉色と端正な造形を特徴とし、かの乾隆帝も北宋の汝窯青磁に魅せられたひとりで、乾隆帝が苦心して集めた21点が台北國立故宮博物院に収蔵されています。現在も景徳鎮で製造されている「青磁水仙盆」の多くは花器として用いられていますが、『飄香』では、コース料理の1品1品にストーリーを持たせ、作品としても楽しんでほしい思いから、料理用の器として用いています。
広尾本店と異なってよりカジュアルでモダンな世界観を目指す六本木ヒルズ『飄香小院』の器は、1970年代に景徳鎮で多く出回った青花芙蓉の器をモデルに、日本で作ったオリジナルの器を使用しています。また六本木ヒルズ店の壁面には色を塗る前の素焼きの景徳鎮を飾っています。磁器にこだわる飄香小院ならではの演出です。
日本で中華料理の器といえば磁器を想像される方も多いでしょう。英語で「China」は磁器を指し、景徳鎮を例にあげるまでもなく磁器は確かに中国を代表する器です。しかし実は中国には漆器も古くから存在していました。
最古の漆の出土品は、7000年以上前のものとされています。紀元前1000年頃の東周期の遺跡からは大量の漆器が出土しており、紀元前200年頃の漢王朝時代には漆器職人が集められ、精巧な彫刻が施された装飾性の高い漆器が王侯貴族のために作られるようになりました。工芸品としての漆器はこのあと唐代、宋代に大きく発展し、8世紀には日本に漆器の技術が伝えられました。
こうした中国の漆器文化は、天然のウルシが自生している四川省、雲南省、河北省、湖北省を中心に栄えました。そして当然のように、四川省では料理の中でも積極的に漆器が使われました。特に貴族や官僚をもてなすために作られた宮廷料理では装飾性の高い高級漆器に料理が盛り付けられるようになっていきました。
このような四川省の古くからの伝統に倣い、飄香で提供されているコース料理でも、しばしば漆器が用いられています。
他にも、木に貼った和紙の風合いやマットな仕上がりが印象的な漆器、金属のような風合いが特徴の「玄釉(くろゆう)」が施された小鉢、手仕事ならでは温かみのある表情の真鍮スプーンなど、国内の展示会やギャラリーに積極的に足を運んで、良いと思った作品を取り入れています。
インテリアは「古き良き成都」という共通コンセプトを持ちながらも、各店舗のスタイルやレイアウトに合わせて変えています。
新しい四川料理を表現する広尾本店では、中国の伝統的な建築手法や装飾にこだわらず、シェフ井桁の頭の中にある世界観に合ったインテリアや調度品をセレクトしています。
厨房を中央にレイアウトした店内の中で、風変わりなデザインの窓格子に、多くの方は目を留めることでしょう。これは、春の訪れ=吉兆を意味する「割れた氷」を表現したデザインとなっています。中国建築において窓や門は、眺望や換気、採光といった機能をになう建具であると同時に、それ自体が装飾品とされます。つまりこれは、竹を眺める窓枠であり、竹との一体感を楽しむ装飾でもあるわけです。
壁には、絵画のように、クラシカルでありながらモダンシノワズリなカーペットを飾っています。東洋の美を支えてきた伝統技術に、モダンな感覚を融合して作られた、美しさと新しさが共存するカーペットです。藍色のモノトーンの中から浮き上がるモチーフそれぞれの美しい形が特徴です。
2010年にオープンした銀座三越店は、よりモダンなスタイルで伝統四川料理を楽しめる空間として設計しました。エントランスには中国建築でよく見かける石を積み上げた石壁をあしらい、上部壁面には景徳鎮の絵付けをイメージしてコバルトブルーのペインティングを施しました。
四川省を象徴する3色といえば、瓦の黒、竹の緑、壁の朱ですが、お客様がお食事をする店内空間もこの3色を基調にデザインしています。窓や仕切りは黒く塗装し、四川省杜甫草堂にある竹林に沿って続く壁をイメージし、朱色のキャビネットを店舗中央に配置しています。また壁面には中国を代表する弦楽器、二胡を飾り、上質な空間を演出しています。
伝統四川料理をよりカジュアルにご提供するというコンセプトで2018年9月にオープンした飄香小院(六本木ヒルズ店)は、よりコンパクトに伝統四川料理の世界を再現しています。中国人書道家、熊峰先生の書が飾られた入口の左手には厨房が見え、右手には細長い通路が配置されています。
鳥かごや縁起のよい文様を施した壺を潜り抜けると、壁面に景徳鎮の素焼きを飾った店内空間が広がります。個室の一つには麻布十番本店と同様に円形の窓があしらわれ、その中には宋代の四川をモチーフにした『蜀川胜概図』が描かれています。
四川料理には、四川省周辺の少数民族料理や、本来中国に存在しなかった唐辛子など、外部の食文化を積極的に取り込む一面がありますが、清代末期に流れ込んできた西洋料理もまた、伝統四川料理が取り込んだ外部の食文化です。飄香小院にはワイングラスやシャンデリアなど、中国的な様式の中に西洋風の装飾が多くあしらわれていますが、これも外部の食文化を積極的に取り込むという四川料理の精神性をデザインに反映したものです。
2021年にオープンした代々木上原店は、中国四川省の人々が家庭や食堂で好んで食べる郷土料理に飄香のエッセンスを加え、アラカルトメニューを中心にご提供します。本場・四川で体験した驚きや楽しさを、カウンター越しにお伝えするというコンセプトで設計されました。エントランスには、四川省を象徴する竹を配置し、よりお料理を楽しめるようになっています。
店内の壁には、中国人書道家、熊峰先生の書も飾られています。
中国では、店頭や家屋の軒先に鳥のいない鳥かごが飾られている風景をよく見かけますが、中国の風水では鳥かごは幸運を呼ぶとされているためです。入口には鳥かごが吊るされており、これもお店とお客様の幸運を願って施されたデザインです。創業当初の代々木上時代から店内に飾っている中国の民俗画もあります。
飄香のお店で伝統四川料理をお楽しみください
伝統四川料理を追求する飄香のこだわり