飄香の魅力
四川料理で味の決め手となるのはなんといっても香辛料です。香辛料の使い方や選び方にこそ、四川料理人の技量が問われます。もちろん飄香でも香辛料には並々ならぬこだわりを持っています。
ここでは唐辛子とそれ以外の香辛料について、詳しくご紹介します。
目次
唐辛子は元々中国にあった香辛料ではありません。原産地は中南米で、アメリカ大陸以外で唐辛子が食されるようになったのは16世紀の大航海時代以降のことです。中国に伝来した時期は諸説ありますが、17世紀の明朝末期に中国に伝わったといわれています。
出会って「まだ400年」の唐辛子は、四川料理の香辛料としては新参者です。しかしながら、現代の四川料理には欠かせない中心的な香辛料となっています。日本人には「四川料理=唐辛子料理」と連想する方も多いと思いますが、その発想自体は大きく間違ってはいません。
飄香では複数の唐辛子を用意し、辛味、味の特性、香り、色などの特性を考慮して、料理によって使い分けています。その中でも代表的なものをここでご紹介します。
新一代辣椒日本の鷹の爪に似た比較的新しい品種で、鮮やかな赤と強くシャープな辛味が特徴です。辛くて刺激的な味に向いていて、四川名物の火鍋にも新一代辣椒が使われています。新一代辣椒と花椒を混ぜて麻辣ソースを作ることもあります。 | 灯篭椒四川省で品種改良されて生まれた四川省特産の唐辛子です。丸くて短いのが特徴です。辛味はそれほど強くはなく、やや甘みも感じさせます。肉料理の下味に用いると、辛味と甘味が混在する奥行きのある味に仕上げることができます。 |
満天星辣椒やはり大きさは小ぶりですが、辛味と香りが非常に強い唐辛子です。スパイシーな肉料理や炒め料理など、唐辛子らしいキレのある強い辛味と香りが必要な時には欠かせません。 | 二荊条辣椒肉厚で柔らかい大きな唐辛子です。辛さよりも旨味が強いのが特徴です。塩水に付けて乳酸発酵させて漬物にしたり(泡辣椒)、豆瓣醤という調味料の材料にしたりします。 |
鮮辣椒乾燥ではなく生の唐辛子を使うこともあります。赤以外に、黄、緑などもあり、料理の彩りや泡辣椒に用います。 | 印度椒インドの唐辛子で、本場四川で「特に辛い唐辛子」といえば、これが使われることが多いです。 |
子弾頭辣椒大きさは小ぶりですが辛味が強い唐辛子。香りが強く、特に油でじっくり炒めると食欲をそそる素晴らしい香りが拡がります。すりつぶしながら油をかけて炒めると独特の香りと辛さが引き立ちます。魚介料理などとの相性も抜群。 | 縦椒辛味はそれほどでもなく、細く捻じれたような形状が特徴で、香りが強い唐辛子です。水で戻すと酸味を引き立てる味になります。前菜に使ったり、細切りにして控え目な辛味と豊かな香りを出すために用いられたりします。 |
上記以外にも、小粒で鋭い辛さを持つ唐辛子「小米椒」は、やはり漬物やソースなどに用いられます。このように唐辛子の特性をうまく活かしながら、料理の辛味、甘味、旨味、香りを調整していきます。また、唐辛子を加工したものもあります。
辣椒面いわゆる一味唐辛子で、乾燥した唐辛子を面粉状に加工したものです。辛味を出したいときや辛さのコントロールなどに使われます。 | 刀工辣椒唐辛子と花椒を油で香ばしく炒めたのちに、包丁で刻む、もしくはすり鉢ですりつぶして、粉状にしたものです。辛さと香りを求める時に用います。 |
11. 泡辣椒唐辛子の四川風漬け物。乳酸発酵した酸味や旨味は「魚香(ユイシャン)」と呼ばれる調味料をはじめとして、四川料理特有の奥深い味づくりには欠かせません。 |
四川料理で使われる香辛料は唐辛子だけではありません。山に囲まれた四川盆地は、夏季と冬季の寒暖の差が激しく、食事を通じて体調を整えるために様々な香辛料を使ってきました。四川料理で使われる香辛料には天然の薬効成分があるものが多く、生薬としても使われているものも少なくありません。まさに「医食同源」を地で行くのが伝統四川料理なのです。そして飄香でも、時には漢方に使われるような多種多様な香辛料を国内外から厳選して仕入れています。ここではその一部をご紹介します。
花椒(ホァジャオ)四川料理には欠かせない、「四川山椒」とも呼ばれる中国産の山椒です。直径3mmほどの赤い実を乾燥させたもので、鮮烈な香りと痺れるような辛味が特徴です。漢代の医書には薬として登場し、鎮痛や皮膚症の症状改善に効果があるともいわれています。 | 青花椒(チンホァジャオ)やはり四川料理には欠かせない香辛料で、赤く熟す前の青い山椒の実を乾燥させたものです。痺れは花椒ほどではなく、爽やかで強い香りが特徴です。むくみや吐き気に効果があるともいわれています。なお日本料理で用いられる和山椒とは植物の種類が異なります。 |
陳皮(チンピィ)ミカン科のマンダリンオレンジの皮を乾燥させた漢方の一種ですが、七味唐辛子に混ぜるなど、食用としてもよく使われている香辛料です。ゆずにも似た柑橘系の甘酸っぱい香りが特徴で、整腸や咳止めに効果があるといわれています。 | 八角(パージャオ)中華には欠かせないトウシキミという中国原産の植物の果実を乾燥させた香辛料です。ほのかな甘みや苦み、独特の香りを持ちます。川魚や豚肉の生臭さを消す効果があり、鎮静や食べ過ぎ、整腸、解毒効果があるともいわれています。 |
桂皮(クゥイピィ)いわゆるシナモンです。生薬としては桂皮と呼ばれて漢代から使われています。独特の甘みと香りを持ち、洋菓子などによく使われますが、四川料理でも甘みのある料理に用いられます。生薬としては血の巡りをよくし、発汗、健胃作用などがあるといわれています。 | 香菜籽(シャンツァイズゥ)いわゆるコリアンダーシードで、パクチーの実を乾燥させた香辛料です。原産は地中海ですが、カレーに代表されるように、アジア全域でよく使われます。ほのかに香る柑橘系の香りと甘みが特徴で、整腸、解毒、食欲増進の効果があるといわれています。 |
香茅草(シャンマオツァオ)いわゆるレモングラスと呼ばれる、イネ科の植物から作られるハーブの一種です。タイ料理のトムヤムクンなどでも使われている、爽やかなレモンのような香りがする香辛料です。鎮痛、血流改善、消化促進、抗菌・殺菌作用があるといわれています。 | 孜然(ズゥラン)いわゆるクミンシードで、エジプトを原産とするセリ科植物の種です。カレーを連想する人も多いと思いますが、そのエキゾチックな香りとほろ苦さ・辛味から、中華の肉料理などにもよく使われます。膨満感の解消、整腸・食欲増進効果があるといわれています。 |
千里香(チェンリィシャン)南アジアなどの群生するゲッキツというミカン科の植物から作られる香辛料で、「九里香」と呼ばれることもあります。爽快な香りと辛味が特徴です。血行改善や食欲不振、腹痛、膨満感解消の効果があるといわれています。 | 丁香(ディンシャン)いわゆるクローブです。インドネシア原産のチョウジノキという植物の開花前のつぼみを乾燥させた香辛料で、肉料理と相性が良く、煮込み料理によく使われます。生薬としては体の温めや消化促進、整腸作用があるとされています。 |
香葉(シャンイエ)いわゆるローリエで、月桂樹の葉を乾燥させた香辛料です。香りが強いため、同じく香りが強い食材の消臭のために使われることも多いです。消化促進・鎮静・抗炎症などの効能があるとされています。 | 香加皮(シャンジャアピィ)ウコギ科の皮を乾燥させて作られる漢方「五加皮」と同じ製法で、ガガイモ科から作られる生薬です。利尿作用、関節の痛み、リウマチの症状緩和などといった効果があるといわれています。 |
白芷(パァイジィ)セリ科のヨロイグサの根を乾燥した生薬です。独特の香りがあり、鎮痛、鼻炎、下痢、湿疹の効果があるとされています。また肌を潤しむくみを取るとして、古代中国宮廷の女性達に美容薬としても重宝されたと伝えられています。 | 木香(ムゥシャン)インド北部原産のキク科の多年草の根を乾燥させた生薬です。独特の蜜のような香りから、アラビアやインドでは古来より芳香剤としても使われてきました。胃腸の温め、食欲増進以外に、月経を整えるともいわれています。 |
紅蔻(ホンコウ)ショウガ科の植物の果実を乾燥させて作った生薬です。整腸効果、食欲増進、消化促進など、消化器官に効能があるといわれています。 | 益知仁(イーチィレン)ショウガ科の植物を乾燥させて作られた生薬です。独特のスパイシーな香りがあります。体を温める、頻尿や尿もれ防止、抗酸化に効くといわれています。 |
羅漢果(ルォハングォ)ウリ科の植物ラカンカの果実から作られる生薬です。清代の医師が発見したとされ、「不老長寿の神果」として珍重されてきました。甘味が強く、天然の甘味料としても用いられています。鎮咳作用があるとして、成分がのど飴に使われていることもあります。 | 灵草(リンツァオ)サクラ草科の草本の葉から作られる生薬で、「零陵草」ともいわれます。独特の香りから香辛料以外に、お香などにも使われています。生薬としては、頭痛、喉の痛み、胸腹部の張りなどに効果があるといわれています。 |
藿香(ホゥシャン)シソ科の多年草カワミドリの葉から作られる生薬です。夏バテの他、下痢や嘔吐止め、解熱剤としても効果があるといわれています。 | 良姜(リャンジャン)ショウガ科の植物の根茎を乾燥させて作られる生薬です。独特の辛味が特徴で、この成分には解熱・鎮痛作用、下痢防止の効果があるとされています。 |
草果(ツァオグォ)ショウガ科の植物の成熟した果実から作られる生薬です。スパイシーな香りがあり、お腹を温め、吐き気や嘔吐、膨満感、下痢にも効くとされています。 | 排草(ツァオツァオ)サクラソウ科の草を乾燥した生薬です。清涼感のある爽やかな香りが特徴です。頭痛、風邪、咳、リウマチ、腹痛、月経不順などに効くといわれています。 |
白蔻(パイコウ)ショウガ科の植物から作られる生薬で、白豆(びゃくずく)とも言われます。お腹を温める他、吐き気、食欲不振や消化不良にも効くとされています。 | 香果(シャングォ)ニクズク科の植物から作られる、独特の香りを持った生薬です。気の巡りを良くし、血行改善や鎮痛の効果をもたらすといわれています。 |
砂仁(シャーレン)ショウガ科のハナミョウガなどの熟した実を乾燥したもので、「縮砂」とも言われます。独特の香りと辛味があり、消化不良・食欲不振に効くといわれています。 | 甘草(ガンツァオ)マメ科のカンゾウの根から作られる生薬です。砂糖150倍以上ある甘味を持ち、古来より世界中で薬として使われてきました。咳止めや鎮痛効果があるといわれています。 |
香草(シャンツァオ)オミナエシ科の植物の根茎から作る生薬です。甘味が強く、「甘松」とも呼ばれます。芳香性のある健胃剤として、食欲不振や胃の不快感の緩和に使われます。 | 老蔻(ラオコウ)ショウガ科の植物の種子を乾燥させて作る生薬です。腹痛、嘔吐、消化不良の改善のほかに、整腸効果などがあるとされています。 |
小茴(シャオフイ)いわゆるフェンネルシードで、西洋料理にも使われます。爽やかな香りがあり、消化促進、整腸効果、口臭予防、冷え改善などに効果があるといわれています。 | 山柰(シャンナイ)ショウガ科のバンウコンの根茎を輪切りにして乾燥させた生薬です。消化促進、止血剤などにも広く用いられ、虫よけ効果もあるといわれています。 |
四川料理をはじめとする中華料理において、味のベースになっているのは数々のスープです。飄香では数種類の自家製スープをあらかじめ用意し、料理や用途に応じてこれらを使い分けています。ここでは代表的な4つのスープと、飄香ならではの味を作り上げている自家製の煮汁、香味油をご紹介します。
鮮湯鶏ベースのスープです。いわゆる鶏ダシは中華料理の基本で、料理に幅広く使います。飼育期間が長い老鶏を使い、長ネギやショウガと合わせ約6時間弱火にかけて煮込んだ後、アクを取って仕上げます。 | 高湯鮮湯に豚スネ肉、鴨肉、干し貝柱、金華ハムなどをさらに加えて2時間煮込んで作る贅沢なスープです。飄香ではもっとも使用頻度が高いスープであり、フカヒレ料理などの高級食材の料理などに使っています。 |
白湯鶏と豚がベースのスープです。強火でグラグラと炊くため脂分が乳化し、白く濁るのが特徴です。冷めると豊富なコラーゲンが凝固します。鶏肉以外に、鴨手羽先、豚スネ肉、豚皮、豚足、豚ゲンコツ、鶏モミジなどを使います。 | 清湯高湯をベースに、鶏と豚の挽肉、葱、生姜、老酒などを加えて火をかけ、ペーパータオルで濾過して仕上げる、透き通った見た目の美しいスープです。旨味が凝縮されており、宴席料理などの高級料理に頻繁に用いられています。 |
飄香川滷水香辛料がたっぷり入った自家製の漬け汁で、肉類に下味を付ける時などに用います。鮮湯をベースに、豚骨、鳩爪、鴨手羽先を加え、さらに唐辛子や八角、桂皮、陳皮などの16種類の香辛料を加え、4時間ほどゆっくり炊いて仕上げます。 | 飄香香料油なたね油に長ネギ、にんにく、ショウガ、セロリ、香菜を炒めたのち、八角、桂皮、花椒などをはじめとする30種類以上の香辛料を加え、1時間加熱した後に1日寝かせるなど、手間暇かけて作っている自家製の香味油です。 |
飄香のお店で伝統四川料理をお楽しみください
伝統四川料理を追求する飄香のこだわり